ご存知の通り、ホテル業界は新型コロナウイルスの影響により大きなダメージを受けています。
そんな中、新型コロナウイルスがきっかけでスマートホテルに興味を持ったホテル支配人やオーナーの方は多いでしょう。ホテルの運営は、とにかくランニングコストがかかります。特に人件費は、ランニングコストの中でも支出の大きいコストです。
収益を確保するためには、サービスの質は落とさずに、いかに人件費を削減するかが課題となります。
IoTを活用しホテルをスマート化することで、サービスの質を落とさずに人件費を削減を目指すホテルも増えてきています。
日本でも増えてきているスマートホテル
ひと昔前までは、ネットワークに繋がる製品はパソコンやスマホなどに限られていました。
しかし、AIスピーカーやAI搭載の冷蔵庫や掃除機などの登場により、すでにIoTは一般家庭においても身近な存在となっています。スマートホテルは、このようなデジタルライフをホテルの中に取り入れることをいいます。
- スマホをルームキーとして使用
- AIコンシェルジュ
- 非接触式のチェックインシステム
- スマートフォンからルームオーダー など、
例えば、HISが運営する「変なホテル」は、人間ではなくAIを搭載したロボットが接客することで話題になりました。
また、大手ホテルチェーンの「アパホテル」は、スマートフォンのアプリでチェックインが完了する「アパアプリ」を開発しています。アパアプリは200万ダウンロードを達成しており、多くのユーザーから支持されています。
このように、日本国内においてもホテルをスマート化する「スマートホテル」は増え続けているのです。
では、実際にスマートホテル化で成功しているホテルをいくつか紹介します。
マリオットホテルの例
マリオットは2015年、「ウェスティン」「シェラトン」で有名な「スターウッドホテル&リゾートワールドワイド」を買収しました。これにより業界一位を勝ち取り、世界最大のホテルグループとなりました。
最近では中国大手「アリババグループ」の旅行会社部門「飛豚旅行」と共同でスマートホテル事業に着手。世界最大のホテルグループで、5つ星ホテルも多数あるマリオットホテルが、スマートホテル事業に注力しているのです。
また、マリオットのスマートホテル化で話題になったのが、顔認証でチェックインするシステムです。宿泊客はスマートフォンの専用アプリでホテルに用意されたQRコードをスキャンします。これにより、システムが予約照合しチェックイン手続きが完了するという仕組みです。
顔認証で宿泊客を識別することにより、人員を配置することもなく、手続きの簡略化にも成功しています。
また、客室内においては、照明の操作やエアコンの調整、カーテンの操作までできるAIスピーカーを設置。さらに、ルームサービスやアメニティの交換といった要望にまでAIスピーカーが対応しています。
スマートホテル化することにより、ホテルだけではなく宿泊客の利便性にも大きく貢献しているのです。
変なホテルの例
変なホテルは、長崎県佐世保市のハウステンボスに1号店がオープンし、その斬新なシステムにより一躍話題になりました。
生産性向上を目的に、AIを搭載したロボットが人間に代わってチェックインやポーター(荷物運び)をします。
その斬新なシステムは、「世界初のロボットホテル」としてギネス世界記録に認定。変なホテルは、日本における「スマートホテル」のパイオニア的存在といえるでしょう。
また、今では主流となった顔認証のシステムや、タブレットを使った客室内の一括操作などにも対応し、スタッフの仕事をベッドメイクなどの一部に絞ったことで、人件費の大幅な削減につなげています。
変なホテルはこれまでの「ホテルでは人間がおもてなしをする」という常識を一変させました。この変なホテルの登場がきっかけで、「スマートホテル」という言葉を耳にしたという人も多いでしょう。
スマートホテルのイメージの変化
新型コロナの流行の影響で、ゲストがホテルに求めることも大きく変化しました。
特に、これまでホテル業界の特徴でもあった「対面」でのおもてなしが、感染症対策の文脈から避けられるようになったのです。
また、近年のスマートフォンの著しい技術の進化も重なり、スマートホテルの導入により拍車をかけています。
一方で、人によるおもてなしを無くすことで、顧客満足度の低下を危惧する方もいるかと思います。
しかし、今立ち止まって考えていただきたいのが、その「おもてなし」は本当にゲストが求めているのでしょうか。ビジネス客など、出張で宿泊を余儀なくされているが、感染症対策の観点からあまり人と接触したくないと考えているお客様もいるのではないでしょうか。
ホテルによって、客層や宿泊の目的も異なりますので一概には言えませんが、お客様の目線に立って、お客様が求めているものを提供するのが、本来のおもてなしだと思われます。
実際に帝国ホテルエンタープライズ大脇善夫社長はインタビューで下記のように述べています。
ホテルマンとして、最もショックを受けたのが、新型コロナの感染予防を徹底しようとすると、人によるサービスを全否定しなければならなかったことだ。人による心のこもったおもてなしは帝国ホテルの伝統であり、それを否定されると、これからどう差別化していけばいいのか、全社員が悩んだ。結論としては、お客様の安全・安心を最優先に、今できることをしっかりやっていくことしかない、ということだった。
「帝国ホテルの本店は効率化以外にも重要な部分があるので簡単には変えられないが、運営を受託しているホテルやレストランに関しては、ビジネスユースが多く、チェックインやチェックアウトの無人化を進めていく。スマートフォンが発達し、客室内の電話を使う人も減っており、チェックアウトの手続きが必要なくなっている。公共交通の自動販売機や自動改札機が普及したように、ホテルの自動化も、コロナ禍をきっかけに進んでいくだろう。レストランを含め、QRコード決済などのキャッシュレス決済も進む」
公共財団法人 日本生産性本部
人による対面接客の価値が相対的に下がっている今、IoTを活用したホテルのスマート化はどんどん進んでいくでしょう。
ホテルのスマート化によるメリット
ホテルをスマート化することで、施設・ゲスト双方にメリットをもたらします。それぞれ見ていきましょう。
人件費の削減
既存のホテルを「スマートホテル化」することで、人件費の削減に繋がります。
例えばピークタイムに3人体制だったフロントを、チェックインシステムと1人のスタッフに置き換えられれば、2名分の人件費を削減できたことになります。
AI搭載のロボットやIoTを活用したシステムを導入し、ベッドメイクなどの人でしかできない業務にのみ人員を配置。ホテル運営に必要な人員を最小限に絞れるため、人件費を大幅に削減できます。
また、宿泊業界は慢性的な人員不足とも言われています。特に地方の旅館では求人をかけても人があつまらないという声も上がっています。
フロント業務のスマート化、人員不足の解消にも期待できるでしょう。
チェックインの非対面化
これまで、スタッフが当たり前に対面で行なっていたチェックイン業務も、感染症対策の観点から非対面化が進んでいます。
Booking.comでは、ホテルの詳細欄にて「非対面でチェックイン/アウトができる」という項目がわざわざ追加されています。このことから、非対面でチェックイン・アウトができる施設を求めているゲストがいるということがわかります。
また、施設のクチコミを見ても新型コロナの流行以降、非対面チェックインに肯定的なクチコミが多数挙げられています。
チェックインの非対面化は、安心安全を重要視するゲストに対してはアピールポイントになるのです。
Iot機器を活用することで、自動精算機を使うことなく、スマートにチェックインの非対面化が可能です。
チェックイン時のユーザー体験向上
IoTを活用したスマートホテルのチェックインシステムは、すでにユーザーから高評価を得ています。
ゴールデンウィークなどの繁忙期であれば、チェックインの手続きに行列ができることも珍しくありません。
従来のようにフロントに行って、紙に記入して、、、という作業はお客さんにとって苦痛でしかありません。
一度並ばずにチェックインすることを体験すると、従前のようにチェックインの行列に並ぶことがわずらわしく感じるでしょう。
ホテルのスマート化を促進するIoT機器
ホテルのスマート化のためのIoT機器はたくさんあります。
ここでは、スマートホテル化する上でおすすめのIoT機器を3つを紹介します。
HOTEL SMART(ホテルスマート)

ホテルスマートは、エイジィ株式会社が運営するホテルチェックインシステムです。
HOTEL SMARTにはチェックイン当日はQRコードをかざすだけでチェックインができる「モバイルチェックイン」を搭載されています。
宿泊台帳も事前に宿泊者に送付したマイページから取得できます。スマートロック、キーボックス、カードキーと連携することで、チェックインからキーの受け渡しまで、非対面で完了します。
無人運営時の本人確認も現地設置のタブレットから行え、日本全国の条例に対応した形になっています。
チェックイン用のマイページから部屋のアップグレード、朝食やアメニティなどの追加、オプションツアーの追加販売にも対応。
非対面チェックインに加えて、売上のアップまで狙えるシステムとなっています。
日本でも増えてきているスマートホテル
Tabii(タビー)

Tabiiはand factory株式会社が運営する、宿泊施設向け客室タブレットサービスです。
客室にTabiiのタブレット端末を設置することで、主に以下の機能を利用できます。
各種インフォメーションの電子化
館内案内や設備説明、周辺観光情報はもちろん、飲食店やアクティビティの予約も可能です。
内線電話
お部屋に設置したタブレットからフロントへの内線電話も可能です。
客室に電話機を設置する必要はありません。
混雑状況の表示
レストランや大浴場の混雑状況をタブレットに表示。
お客様自身で共有施設の「密」状態を確認でき、密回避に繋がります。
動画閲覧・多言語LIVEニュース
動画閲覧・多言語LIVEニュース
家族みんなで楽しめるエンタメ動画や、訪日外国人向けの多言語LIVEニュースなどを配信。
宿泊客が部屋で楽しく過ごせるサービスです。
IoTリモコン機能
テレビやエアコンの起動、カーテンや照明の操作も全てタブレット端末で操作可能。
宿泊客は客室内を歩き回ることなく、ベッドの上でくつろぎながら端末を操作できます。
Tabiiのタブレット端末が客室にあることで、宿泊客はより楽しく快適なホテルステイを満喫できるでしょう。
RemoteLOCK(リモートロック)

RemoteLOCK(リモートロック)は、株式会社構造計画研究所が運営するホテル向けスマートロックサービスです。
客室のドアロック向けのスマートロックシステムや、エントランス向けのアクセスコントロールシステムなどがあり、ホテルフロントの省人、無人、非対面運営を実現しています。
HOTEL SMARTなどのホテルシステムとも連動しており、チェックイン対応や鍵の受け渡しの無人対応が可能です。
リモートロックは、最大1000名分の宿泊者の鍵をクラウド上で一括管理します。入室するための暗証番号の発行・変更なども、パソコンとスマホで手軽に操作できます。
宿泊予約ごとに暗証番号は自動更新されていくため、一度チェックイン・アウトしたゲストが同じ番号で入室してしまう事態を避けられます。
ホテルのスマート化がコロナ禍でのホテル運営の鍵!
新型コロナの影響でホテルに求められているおもてなしの形が変わりつつあります。
これまでの対面での接客より、非対面で感染症のリスクをなるべく抑えたいというニーズが高まっているのです。
また、スマートフォンの普及により、デジタル機器へ抵抗がない人も増えてきています。そんな今だからこそ、思い切ってホテルのスマート化に取り組んでみてはいいのではないでしょうか。