コロナウイルスによって依然先行きが見通せない状況のなか、生き残りの鍵となるのは「自社の競争力をいかに強化するか」にあります。
宿泊施設の中ではコロナを逆手にとった独自のマーケティングを実施する施設も増えてきました。
例えば、県外からの観光客が激減した、沖縄県のあるホテルではあえて県内客をターゲットにした目新しいプランを展開し、また福島県のある旅館ではVRを使った観光体験しています。
まさにwithコロナを見据えた新時代のマーケティングです。今回の記事では自施設の収益力をあげるための基本的なマーケティング方法をお伝えし、コロナ禍で集客のトレンドとなっている事例をご紹介します。
ホテル集客のための戦略・アイデア
集客のためにと言っても、ただ闇雲に施策を打てばいいというものではありません。戦略なき施策は時間とコストの無駄になってしまう可能性があります。
集客施策の成功の秘訣は、仮説を元に戦略を立てるところにあります。
一般的に集客戦略は次の手順で進められます。
- 課題の把握
- 市場の把握(セグメンテーション)
- ターゲット選定(ターゲティング)
- 価値選定(ポジショニング)
- 戦略実行(マーケティングミックス)
これらの5つのプロセスは宿泊施設の集客戦略として応用できますので、宿泊施設に落とし込んだ考え方を具体的に紹介します。
①課題の把握:新規顧客開拓かリピート顧客獲得か
まずは現状の集客おける課題を洗い出します。
ホテル・旅館の利用者は新規顧客とリピーターの2種類に分類されます。そして自社の宿泊者情報からどちらの属性に集客課題があるのかを把握しましょう。
この結果リピーター不足が問題だとしたら、顧客属性にもよりますが、集客以前に施設内部に改善点があると考えられます。例えば、スタッフの対応やアメニティの種類、単純にコストなど施設自体に問題があり、新規顧客が定着しない理由となっている可能性があります。
一方で新規顧客の獲得に問題がある場合は、施設が提供する価値と市場のターゲットがミスマッチを起こしている可能性を疑いましょう。次のステップでは、市場のターゲットを明確にし本来ターゲットとすべき対象を明確にしていきます。
そもそも、自社のリピート率が測れていない場合、まずはPMSの導入から進めていきましょう。
②市場の把握(セグメンテーション)
①の作業によって新規顧客の獲得が必要と分かれば、次に市場の客層を把握するステップに移ります。セグメンテーションとは市場の細分化を意味しており、同じニーズを有する客層をグループ化する作業です。
例えば、出張利用の30代サラリーマンをターゲットにするにも、長期利用か短期利用かによって細かい属性も変わってきます。想定される利用者の目的別にグループ分けをしてどのような利用者がいるかを分析していきましょう。
このステップでは過去実際にホテルを利用したお客さんの属性や施設がある地理も利用者の属性を知る貴重な情報源です。
③ターゲット選定(ターゲティング):ターゲットを絞る
想定利用者を分類したら次に細分化した属性からどこをターゲットにするかを決定します。できれば「短期出張利用が目的の30代の男性サラリーマン」のように可能な限り具体的であることが好ましいです。
このターゲット選定は非常に重要な作業で、これによりタッチポイントや訴求すべきポイントは180度異なるため、慎重に進めていきましょう。
④価値選定(ポジショニング):自社の強みを理解する
新規顧客の獲得に苦戦している場合、自施設のアピールポイントを見誤っていたもしくは強みを訴求できていなかった可能性が考えられます。
③で洗い出したターゲットに対して魅力的な強みや優位性となるポイントを検討しましょう。
③でターゲットを明確にしておくと訴求ポイントの洗い出しが楽に進められます。場合によっては強みが見当たらないこともあるでしょう。その時は、付加価値をつけることで強みにできます。
例えば、株式会社共立メンテナンスが運営する「ドーミーイン」では都内にある一部施設で夜鳴きそばの無料提供を行っています。
外出せずにおなかを満たせますし何より無料というお得感があり、緊急事態宣言で深夜にお店が空いていない都内で、ゲストにとって非常に嬉しいサービスです。他施設と差別化する巧みな工夫といえるでしょう。
⑤戦略実行(マーケティングミックス)
標的となるターゲットにどのように訴求するかを考える作業です。「ミックス」とあるようにひとつの方法にこだわるのではなく、効果が期待できるアプローチ方法を複数同時に実行していきます。
では次のそのアプローチ方法のトレンドとなっている代表的な例を紹介します。
ホテル・旅館集客のトレンド
ホテル・旅館の集客方法にはトレンドがあります。次に紹介する集客方法のうちSNSは導入コストをかけずに取り入れられる手軽なマーケテイング対策です。
SNSを活用した若い世代のアプローチ
SNSを通じて爆発的に集客が伸びたという話は珍しいことではありません。メインユーザーである若年層をターゲットにするのではればなお注目すべき方法です。よく使われるSNSはInstagramやTwitterがあります。
Instagramは写真や動画で視覚的に情報を伝える機能に優れているため、ユーザーにリーチしたときに施設の印象を瞬時に伝達する効果があります。
たた共有機能がないことで多くのハッシュタグを付けたり、Instagram内にあるストーリーを駆使したりと多くのユーザーの目に触れるきっかけづくりが必要です。
テキストメディアであるTwitterは速報性に特化しており、拡散力にも長けています。ですから営業時間や新サービスのお知らせなどニュース性のある情報との相性がよいといえます。
ほかにもYouTubeや若年層に人気のTikTok(ティックトック)というSNSも注目を集めるSNSです。
CRM・会員組織を活用した国内顧客の囲い込み
CRMとは「Customer Relationship Management」の略で顧客関係管理と日本語で訳します。
これはビジネス業界において顧客を正確に理解することで密接な関係づくりを目指す仕組みを意味しています。
過去の宿泊記録や顧客からの要望を参考に、最適な提案をしていくのがCRMの本髄です。コロナでインバウンド需要が減ったことを背景に国内需要を囲い込むための仕組みとして注目を集めています。
自社予約サイトからの予約率向上施策
利益率を最大化するためにもOTAに頼り切った販売ではなく、自社サイトからの予約率も必要です。自社サイトからの予約流入を増やすことは、リテラシーの高いユーザーを確保することにもつながります。
SNSと連動させることで自社予約サイトへの呼び込みも効果が期待できますし、ネット検索に引っかかりやすくするSEOというWeb対策も効果的な集客方法です。
ホテル旅館の集客成功事例
上記のトレンドを使って軌道に乗っている施設の具体例を3つ紹介します。
事例①:星野リゾートグループ
星野リゾートグループはリゾートホテルの全国展開を手掛け、長野県に本社を構えるホテル運営会社です。星野リゾートのマーケティングの特徴はSNSを積極的に用いたプロモーション活動にあります。
特に定評があるのがインフルエンサーマーケティングです。これはフォロワーが多いインフルエンサーに施設のPR投稿をしてもらうことで世間の認知度をあげるマーケティング手法になります。
星野リゾートが運営する「リゾナーレ トマム」では有名なインフルエンサーを起用し、施設の魅力を写真で発信したことで大きな反響につながったSNS集客におけるひとつの成功事例です。
事例②:アパホテル
アパホテルは日本全国に639施設、93782室を持ち、フランチャイズ事業を強みとしている会社です。アパホテルのマーケティングの特徴は、業界屈指の全国ネットワークを利用した公式アプリを展開していることです。
アプリからの予約で会員向けに最安値価格とポイント制や会員特典を提供することで、新規顧客の獲得とリピート率の向上を実現させています。
顧客情報を獲得し、ポイント制や会員特典の提案で顧客との関係性強化の役割をしていることから、先に紹介したCRM(顧客関係管理)マーケティングの成功事例と言えるでしょう。
事例③:L&Gグローバルビジネス
L&Gグローバルビジネスは龍崎翔子氏が代表をつとめ、全国にブティックホテルを展開する企業です。
独創的なコンセプトなホテルを展開している同社では、インスタグラムを中心とした発信で多くのフォロワーを獲得しています。
また、代表自身もTwitterフォロワー数6.2万人(2021年9月現在)のインフルエンサーであり、SNSを活用し若年層を中心に集客に活用しています。
まとめ
今回の記事では宿泊施設が見据えるべきマーケティングの基本、そしてトレンドとなっている集客方法についてご紹介しました。マーケティングの見直しは潜在的な課題を浮き彫りにし、市場で自社の競争力を底上げするためのヒントを与えてくれます。記事でご紹介した事例がひとつでもマーケティング力を高めるきっかけや気づきとなれば幸いです。