ホテル・旅館業界の人手不足の現状と解決策

ホテル・旅館業界である宿泊業と言えば、コロナ禍前であれば「万年人手不足の業界」と言われていました。しかしながら、コロナ禍で大打撃を受けたホテル・旅館業界。ホテル・旅館業界における人手不足の現状は、どうなっているのでしょうか?

ホテル・旅館業界の人手不足の現状

 2019年コロナ禍前の日本・東京商工会議所「人手不足への対応に関する調査」では、ホテル・旅館業の約8割の企業が人手不足を感じていました。やや落ち着きを取り戻しながらも、まだコロナ禍にある現在のホテル・旅館業界ですが、人手不足についての感触を、データで確認してみましょう。

参照:https://www.jcci.or.jp/hitodebusoku.pdf

データで見る人手不足

 コロナ禍である2021年7月に、帝国データバンクが行った「人手不足に対する企業の動向調査」によると、調査対象の全ての業界で、「正社員の不足を感じる割合」は約4割であり、「適性」約5割、「過剰」1割。非正社員についても「不足」約2割、「適性」約7割、「過剰」約1割。正社員は人手不足感をやや感じつつも、非正社員は適正人数であるという結果でした。コロナ禍で企業の休業が増え、人が余っていた状態から考えると、コロナ禍前に戻りつつある傾向です。

そして業界別に見てみると、ホテル・旅館業では、非社員が「従業員が『不足』している上位10業種」にランクインする一方、正社員側は「従業員が『過剰』な上位10業種」のなんと1位!同業界では、現在、コロナ禍で比較的雇用が守られた正社員は余り、雇止めを受けたであろう「非正社員」については人手不足が起こりつつあるようです。
企業側としては、市場の回復を見据えて、非正社員に戻ってきてほしいと感じているようですね。

参照:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p210806.pdf

データでは見えない、現場の感じる人手不足とは

 とはいえ、変異株の出現で市場はすぐに右往左往してしまうほど、先行きは不安定。企業としても諸手をあげて人手を増やすことは出来ないのが、ホテル・旅館業界の実情です。
またコロナ禍において、従業員を解雇せずに雇用調整助成金を受け取り、運営を続けたホテル・旅館も多いでしょう。

完全休業を行わなかった施設は、出勤の従業員数を調整してホテル・旅館の運営を続けてきました。その結果、ゲストも少ないですが、従業員も少ないまま運営を行い、人手不足が生じてしまっているのです。

ホテルの人手不足が引き起こす経営問題

 コロナ禍前でも、コロナ禍であっても人手不足によって起こる問題は同じです。人手が足りない為、本来自身の専門分野ではない業務を、どの従業員も代わりに担当する機会が増えます。そしてサービスの質の低下と共に、従業員のモチベーションまでも低下。結果、人が育ちません。

目先の人員不足解消の為に、人員をただ増やすだけでは、ホテル・旅館経営を続けていくために必要な後継者の育成を阻害することと同じです。
2019年実施の日本政策金融公庫総合研究所による「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」では、実際に後継者が見当たらないことを理由に、将来的に廃業を予定している企業が3割にのぼっています。

参照:https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/tyousa_gttupou_2007.pdf

なぜ宿泊業界では人手不足になってしまうのか?

厚生労働省発表の「令和2年雇用動向調査結果の概況」では、入職率、離職率ともにホテル・旅館業界がダントツの1位。多くの人が入って来ては、辞めていくというのが現状の様です。ではなぜ、ホテル・旅館業界は人手不足に陥ってしまうのでしょうか?

参照:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/21-2/dl/gaikyou.pdf

慢性的な低賃金・長時間労働体質

 離職率の高さに、ホテル・旅館業界の慢性的な低賃金や、長時間労働体質が、理由に挙げられるでしょう。国税庁が発表している、令和2年度の民間企業の平均給与は433万円です。

ですが転職支援サービスdodaが発表している平均年収ランキングでは、ホテル・旅館業界の平均給与は339万円となっています。世間の民間給与と大きな開きが出ていますね。

またホテル・旅館は24時間365日稼働しており、営業時間に終わりはありません。目の前にいるゲストを満足させるため、明日のゲストをお迎えするために、長時間労働や、休みの日に連絡が来ることが当たり前になってしまっています。長時間働いているのに、給与は低い。これでは将来のビジョンが見えず、辞めていってしまうのも仕方のないことかもしれません。

参照:https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2020/pdf/001.pdf

コロナ終息後には人手不足が顕著になる

 またコロナ禍においてホテル・旅館業界で働く人たちの多くは、休業を余儀なくされました。令和2年に厚生労働省が作成し内閣府に提出した資料をみても、他業界と比較して休業者数がダントツに多いことが見て取れます。

コロナ禍を経験し、労働者としてホテル・旅館業界に対して感じることは、有事における雇用の不安定さです。コロナ禍の先行きが未だ不透明な中、不安定な業界に身を置くことは、自身の未来のキャリアビジョンを描くことが難しいと感じるかもしれません。

参照:https://www5.cao.go.jp/keizai1/koyoukaigou/20200729/20200729siryo3-1.pdf

ホテル旅館での、人手不足解消方法

その為、今後ホテル・旅館業界で働きたいと思える労働者が、減る可能性も考えられます。
では来るべき需要の回復を見据え、ホテル・旅館業界では、どのように人手不足を解消すればよいのでしょうか?

労働環境の改善

 まずは従業員の労働環境を、改善する必要があります。給与水準を他業界水準まであげることや、労働時間の適性化、有給休暇取得の徹底など、安心して働く上で満たさなければならない基本的な項目を満たすことです。労働環境を改善し、整えることは、企業側が従業員を尊重している、というメッセージに繋がります。

「自分たちは会社から大切に扱われている」と実感することで、従業員から企業へのロイヤルティが高まります。

テクノロジーを活用する

 では労働環境を改善しただけで、人手不足は改善されるのでしょうか?従業員満足度は高くなっても、全体的な業務量が減らないのであれば、残業代や人件費などコストの負担は増える一方で、経営が立ち行かなくなることは目に見えています。
人手不足とは、結局のところ「労働力」不足にあたります。その労働力を人ではなく、現代ではテクノロジーで補うことが可能です。

業務効率化をすすめ、生産性を高める

 中小企業庁の「2021中小企業白書」にある「ITツール・システム、導入状況」のデータで見てもホテル・旅館業界の多くは、「導入している」より「導入する予定はない」の割合が多くみられます。
 このことが何を意味するかというと、労働生産性を高める取り組みを、ホテル・旅館業界全体では未だに行っていないということ。つまりは、労働力の多くのリソースを「人」に頼っているということです。

ですが「人」の労働時間は労働基準法で定められており、限りがあります。その中で生産性を高めるためには、業務の効率化を行い、「人」でしか行えない業務に集中させ、それ以外はテクノロジーで解決させる。今後、労働者人口が減少していくことが分かっている日本では、テクノロジーを活用で生産性を向上させるの解決法は、現時点では残念ながら見当たりません。

チェックイン後のお礼メールや宿泊者台帳の転記作業など、特に、日々のルーティンワークとなっている業務はシステムによって効率化できるポイントです。

下記記事ではシステムにより、業務効率化と生産性の向上のポイントがまとまっています。併せてご参考にしてください。

参照:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap2_web.pdf

企業価値を高めるために出来ること

 しかしながらホテル・旅館業界でも、コロナ禍を経験したことにより、デジタル化に対する優先度について、変化がみられつつあるようです。
先ほどご紹介した中小企業庁「2021年中小企業白書」では、コロナ禍前後で「デジタル化に対する優先度の変化」についてもアンケートを行いました。コロナ禍前では、デジタル化の優先度が高い割合は39.1%だったのが、コロナ禍後では56.2%にまで増加しています。
ホテル・旅館業界でもコロナ禍を経て、ようやく生産性を高めようとする兆しが、見えてきました。

今後、「人」と「テクノロジー」のリソースを活かすことで、企業全体での労働生産性が高まります。業務に追われる日々は終わり、従業員たちは精神的にも物理的にも余裕が出てくるでしょう。そして、自分たちにしか提供できないサービスは何なのか?と、従業員たちが自ら問いかけ始めることで、企業価値を高めるチャンスが、生まれるのではないでしょうか。

ホテルDXで生産性の向上を目指す!

おわりに

誰もが予期しなかった新型コロナウィルスによる災害を経て、ホテル・旅館の経営はより一層、選択と集中を重視した、経営判断が求められています。従業員たちの未来、企業の将来を作り続ける為にも、実りある投資をご検討ください。

関連記事

TOP