宿泊税と宿泊事業者向け宿泊税対応システム整備費補助金について解説

本記事では、ホテルや旅館など宿泊施設に課税される宿泊税について、対策となるシステムや補助金の情報を交えて解説いたします。

宿泊税とは

近年、観光地での地域振興や観光インフラ整備を目的に「宿泊税」の導入が全国で進んでいます。
宿泊税とは、宿泊料金と別に宿泊客から徴収される税金で、集められた財源は観光地の整備やサービスの質向上に活用されます。
旅行者にとっては追加の費用負担となる一方、宿泊事業者には課税への対応やシステム改修といった実務負担が求められ、業界全体での理解と準備が重要となっています。

課税方法

宿泊税の課税方法には、宿泊者1人1泊あたり一定額を課す「定額法」と、宿泊料金に応じて税額が変動する「定率法」の2種類があります。
どちらの方式を採用するかは、自治体ごとに異なり地域の観光需要や宿泊施設の状況に応じて決定されます。
事業者にとっては、自施設の所在地域で採用されている課税方法を正確に理解し、適切な対応を行うことが重要です。

支払い方法

また、宿泊税は宿泊者が現地で直接支払うのが基本で、宿泊料金とは別に徴収されます
特に注意したいのは、じゃらんや一休.comなどのOTA(オンライン宿泊予約サイト)を通じて予約した場合です。
これらのサイトでは原則として宿泊税を事前にOTAでは徴収できないため、宿泊者は現地のフロントで宿泊料金とは別に宿泊税を支払う必要があります。
利用者にとっては、事前に支払いが済んでいると勘違いしやすい点ですので、注意が必要です。
宿泊施設側でも、チェックインやチェックアウト時にしっかり説明を行い、トラブル防止に努めることが求められています。制度に慣れていない方にもわかりやすく伝える対応が必要不可欠です。

参照:https://faq.ikyu.com/app/answers/detail/a_id/154/~/%E3%80%90%E5%9B%BD%E5%86%85%E5%AE%BF%E6%B3%8A%E3%80%91%E5%AE%BF%E6%B3%8A%E7%A8%8E%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6

対応地域

宿泊税の新設は全国で着実に進んでいます。
総務省は令和7年3月21日付で、北海道や宮城県、岐阜県、島根県、広島県の2県9市への宿泊税新設に正式に同意しました。
具体的には、北海道の札幌市、小樽市、釧路市、北見市、網走市、宮城県仙台市、岐阜県高山市と下呂市、島根県松江市、広島県が対象です。
参照:https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01zeimu02_02000407.html

こうした新設予定地域では、宿泊税導入に伴うシステム改修や対応が必要となるため、補助金制度を活用しながら早めに準備を進めることが非常に重要です。導入時期は自治体によって異なり、おおむね令和7年10月から令和8年4月(2025年10月~2026年4月)を目安に予定されています。

宿泊税の制度設計も地域によって違いがあり、定額制・定率制の課税方式や非課税対象、納付方法、使途などに差があります。
例えば、「利用者1人あたり100円」という定額方式の地域もあれば、「宿泊料金の◯%」とする定率方式の地域もあります。

注意点

税収は地域振興や観光整備、公共施設の充実などを目的とした「目的税」として扱われています。
新設地域の宿泊事業者は、ご自身の地域の導入時期や課税方式、免税対象などの詳細を正確に把握しておかないと、制度開始後に混乱が生じる恐れがあります。
今後は自治体の公式ページや観光協会を通じて、制度内容の周知と案内を強化することが求められています。
上手に制度を活用すれば、税収によって観光環境が整備され、地域全体の魅力向上にもつながるでしょう。

宿泊税対応システム整備費補助金とは

宿泊税対応システム整備費補助金は、宿泊税導入に伴うシステム改修費用を支援する制度で、補助内容や補助率、対象経費は自治体ごとに異なります。

システム改修等に伴うハード及びソフトウェアとは

宿泊税導入にあたっては、宿泊事業者がシステム改修を行う必要があります。
ここでいう「ハードウェア」とは、レジ端末やパソコン、サーバーなどの物理的な機器を指します。
一方、「ソフトウェア」は予約管理システムや会計ソフト、POSレジに連動した課税処理機能などを意味します。

これらを改修・導入することで、宿泊税の計算や領収書発行、自治体への報告がスムーズに行えるようになります。
特にOTA経由の予約や免税対象の判断が必要な場合は、対応可能なシステム整備が不可欠です。
こうした改修には多額の費用がかかるため、補助金制度を活用し、早めに準備を進めることが望ましいです。

ホテルシステム(PMS)

宿泊税対応において重要な存在となるのが、PMS(プロパティ・マネジメント・システム)と呼ばれるホテルシステムです。PMSは宿泊予約の管理、チェックイン・チェックアウト業務、会計処理、顧客情報の管理など、ホテル運営の中核を担っています。

宿泊税が導入されると、このPMSにも新たな課税処理機能の追加や帳票出力の変更などの改修が必要となります。
特に複数のOTAと連携している施設では、手作業での対応に限界があるため、自動で宿泊税を算出・反映できるシステム整備が求められます。

こうした改修は補助金の対象となる可能性が高いため、導入を検討している施設は早めに要件を確認し、対応準備を始めることが大切です。宿泊税に対応できるPMSの整備は、業務効率化と正確な税処理の両面で大きなメリットがあります。

POSレジシステム

さらに、PMSと並んで宿泊税対応で重要な役割を果たすのがPOSレジシステムです。
POSレジはフロントでの会計処理や領収書の発行、売上管理を行うシステムで、宿泊料金に宿泊税を正確に加算・表示する機能が求められます。

特に現地決済が中心となる宿泊税では、チェックアウト時に自動で宿泊税が計算される仕組みを整えておくことが、フロント業務の負担軽減やトラブル防止に直結します

加えて、領収書への明確な税額表示や、自治体への報告に必要なデータ出力機能の整備も重要です。
こうした機能強化にかかる費用も補助金の対象となる可能性が高いため、スムーズな税運用に向けてPOSレジの見直しや改修計画を立てることが、宿泊事業者にとって大きな一歩となるでしょう。

補助金 募集中地域一覧

宿泊税対応システム整備費補助金の募集地域や補助内容、補助率は各自治体によって異なります。以下にいくつかの自治体の例をまとめました。

宮城県 宿泊税対応システム整備補助金

・対象地域:宮城県(※仙台市を除く)
・補助対象期間:2024年10月17日以降に発生した経費(申請受付は2025年4月1日〜2026年1月30日)
・補助率:10/10(全額補助)
・補助上限額:原則150万円まで(超える場合は事前協議が必要)

高山市(岐阜県)宿泊税対応システム整備費補助金

・対象地域:岐阜県高山市(宿泊税特別徴収義務者として登録された事業者)
・補助対象期間:令和7年度(2025年4月1日〜2026年3月31日内の整備)で、整備完了期限は2026年2月28日
・補助率/上限:補助率10/10、上限は100万円/施設

下呂市(岐阜県)宿泊税システム整備費等補助金

・対象地域:岐阜県下呂市(宿泊税特別徴収義務者登録事業者)
・補助対象期間:令和7年度のみ。交付申請期限は2026年1月31日、実績報告は完了後30日以内または2026年3月31日まで
・補助率/上限:補助率10/10、額は1,000円未満切捨て(上限なし)

長野県 宿泊事業者のDX支援補助金

・対象地域:長野県内(松本市、軽井沢町、白馬村、阿智村除く)の宿泊事業者
・補助対象期間:申請期間は2025年6月2日〜8月19日。実績報告は2025年12月31日まで、補助金の支払い確定は2026年3月31日まで
・補助内容・率・上限
  1.宿泊税対応システム改修:補助率10/10、上限なし
  2.DX投資支援:補助率2/3、上限300万円/施設

松江市(島根県)宿泊税レジシステム改修等補助金

・対象地域:島根県松江市(登録済または申請中の宿泊税特別徴収義務者)
・補助対象期間:2025年6月2日〜12月26日まで申請受付
・ 補助率/上限:補助率1/2、上限額=施設数 × 25万円

参照:
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/kankou/shukuhakuzei.html
https://www.city.takayama.lg.jp/kurashi/1000015/1005408/1021226/1021235.html
https://www.city.gero.lg.jp/soshiki/5/32406.html
https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/dx_top.html
https://www.city.matsue.lg.jp/soshikikarasagasu/zaiseibu_shiminzeika/zeikin/accommodationtax/23003.html

補助金が活用できる宿泊施設向けオールインワンシステム

HOTEL SMARTでは、管理システム(PMS)はもちろん、予約エンジンやセルフチェックインシステムなど宿泊施設の運営に必要なシステムが全て取り揃えているクラウド型のオールインワンシステムです。
現金精算まで対応可能な自動チェックイン機も補助金を活用しながら導入が可能です。

PMS上で定額法・定率法ともに対応できる宿泊税管理機能や自動チェックイン機による現金での宿泊税徴収も対応可能となります。
その他、外部のPOSレジシステムや会計ソフトを中心に、スマートロックやカードキー、サイトコントローラーやなど連携サービスも幅広く取り揃えており、一棟貸しや民泊など小規模施設からチェーンホテルなど大規模施設まで様々な規模やオペレーションに対応することができます。

またお客様のスマートフォンで館内案内/周辺情報が閲覧できるインフォメーションシステムのデジタルガイドや、ルームサービスや注文が行えるスマートオーダーなど施設全体のDX化を実現いたします。

まとめ

補助金の内容や申請期間は自治体ごとに異なります。
事業者の皆さまは、各自治体の制度内容や申請スケジュールをしっかり把握し、適切に対応することが重要です。
また、POSレジやPMSの改修費用も対象となるため、早めに準備を進めることで宿泊税対応の負担を軽減できるでしょう。

補助金を有効活用し、スムーズな宿泊税運用と業務効率化を目指してください。
最新の情報は必ず各自治体の公式サイトでご確認いただき、申請漏れや制度の適用忘れを防ぐことも大切です。
今後も制度が変わる可能性があるため、こまめな情報収集をおすすめいたします。

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