
正社員不足77.8%、非正社員は慢性的な人材流出——ホテル・民泊業界で人手不足が深刻化する理由を最新データと現場の実態から徹底解説。低賃金・長時間労働の構造問題、コロナ後の雇用不安、サービス品質低下リスクに加え、テクノロジー活用・業務効率化・セルフチェックイン導入による実践的な解決策を、全国3,500施設以上のホテル・旅館様へ、宿泊管理システム(PMS)や自動チェックイン機などの提供を通じて得た現場の知見と、最新の業界トレンドを基に、宿泊施設の経営に役立つ実践的な情報を解説します。
目次
ホテル・民泊業界の人手不足の現状
帝国データバンクの調査によると、ホテル・旅館業において正社員の人手が「不足している」と回答している事業者の割合が 2023年1月時点で 77.8%にのぼります。
データで見る人手不足
コロナ禍である2021年7月に、帝国データバンクが行った「人手不足に対する企業の動向調査」によると、調査対象の全ての業界で、「正社員の不足を感じる割合」は約4割であり、「適性」約5割、「過剰」1割。
非正社員についても「不足」約2割、「適性」約7割、「過剰」約1割。正社員は人手不足感をやや感じつつも、非正社員は適正人数であるという結果でした。コロナ禍で企業の休業が増え、人が余っていた状態から考えると、コロナ禍前に戻りつつある傾向です。
そして業界別に見てみると、ホテル・民泊業では、非社員が「従業員が『不足』している上位10業種」にランクインする一方、正社員側は「従業員が『過剰』な上位10業種」で1位。同業界では、現在、コロナ禍で比較的雇用が守られた正社員は余り、雇止めを受けたであろう「非正社員」については人手不足が起こりつつあるようです。
企業側としては、市場の回復を見据えて、非正社員に戻ってきてほしいと感じているようですね。
参照:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p210806.pdf
データでは見えない、現場の感じる人手不足とは
長時間勤務になりやすい、休日や休暇を取りづらいという指摘があり、賃金水準・待遇が他産業と比べて低めという見方もあります。離職率が高く、常に人材を補充し続けなければならない構造にあります。経験・スキルが定着する前に辞めてしまうケースも多いようです。
国内の労働人口の減少・高齢化に伴い、そもそも「働ける人」の数が減るという環境変化も背景にあります。
ホテルの人手不足が引き起こす経営問題
人手が足りない為、本来自身の専門分野ではない業務を、どの従業員も代わりに担当する機会が増えます。そしてサービスの質の低下と共に、従業員のモチベーションまでも低下。結果、人が育ちません。
目先の人員不足解消の為に、人員をただ増やすだけでは、ホテル・民泊経営を続けていくために必要な後継者の育成を阻害することと同じです。
2019年実施の日本政策金融公庫総合研究所による「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」では、実際に後継者が見当たらないことを理由に、将来的に廃業を予定している企業が3割にのぼっています。
参照:https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/tyousa_gttupou_2007.pdf
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なぜ宿泊業界では人手不足になってしまうのか?
厚生労働省発表の「令和2年雇用動向調査結果の概況」では、入職率、離職率ともにホテル・民泊館業界がダントツの1位。多くの人が入って来ては、辞めていくというのが現状の様です。ではなぜ、ホテル・民泊業界は人手不足に陥ってしまうのでしょうか?
参照:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/21-2/dl/gaikyou.pdf
慢性的な低賃金・長時間労働体質
離職率の高さに、ホテル・民泊業界の慢性的な低賃金や、長時間労働体質が、理由に挙げられるでしょう。国税庁が発表している、令和2年度の民間企業の平均給与は433万円です。
ですが転職支援サービスdodaが発表している平均年収ランキングでは、ホテル・民泊業界の平均給与は339万円となっています。世間の民間給与と大きな開きが出ていますね。
またホテル・民泊は24時間365日稼働しており、営業時間に終わりはありません。目の前にいるゲストを満足させるため、明日のゲストをお迎えするために、長時間労働や、休みの日に連絡が来ることが当たり前になってしまっています。長時間働いているのに、給与は低い。これでは将来のビジョンが見えず、辞めていってしまうのも仕方のないことかもしれません。
参照:https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2020/pdf/001.pdf
コロナ終息後には人手不足が顕著になる
またコロナ禍においてホテル・民泊業界で働く人たちの多くは、休業を余儀なくされました。令和2年に厚生労働省が作成し内閣府に提出した資料をみても、他業界と比較して休業者数がダントツに多いことが見て取れます。
コロナ禍を経験し、労働者としてホテル・民泊業界に対して感じることは、有事における雇用の不安定さです。コロナ禍の先行きが未だ不透明な中、不安定な業界に身を置くことは、自身の未来のキャリアビジョンを描くことが難しいと感じるかもしれません。
参照:https://www5.cao.go.jp/keizai1/koyoukaigou/20200729/20200729siryo3-1.pdf
ホテル・民泊での、人手不足解消方法
労働環境の改善
まずは従業員の労働環境を、改善する必要があります。給与水準を他業界水準まであげることや、労働時間の適性化、有給休暇取得の徹底など、安心して働く上で満たさなければならない基本的な項目を満たすことです。
労働環境を改善し、整えることは、企業側が従業員を尊重している、というメッセージに繋がります。
「自分たちは会社から大切に扱われている」と実感することで、従業員から企業へのロイヤルティが高まります。
テクノロジーを活用する
では労働環境を改善しただけで、人手不足は改善されるのでしょうか?従業員満足度は高くなっても、全体的な業務量が減らないのであれば、残業代や人件費などコストの負担は増える一方で、経営が立ち行かなくなることは目に見えています。
人手不足とは、結局のところ「労働力」不足にあたります。その労働力を人ではなく、現代ではテクノロジーで補うことが可能です。
業務効率化をすすめ、生産性を高める
中小企業庁の「2021中小企業白書」にある「ITツール・システム、導入状況」のデータで見てもホテル・民泊業界の多くは、「導入している」より「導入する予定はない」の割合が多くみられます。
このことが何を意味するかというと、労働生産性を高める取り組みを、ホテル・民泊業界全体では未だに行っていないということ。つまりは、労働力の多くのリソースを「人」に頼っているということです。
参照:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap2_web.pdf
ですが「人」の労働時間は労働基準法で定められており、限りがあります。その中で生産性を高めるためには、業務の効率化を行い、「人」でしか行えない業務に集中させ、それ以外はテクノロジーで解決させる。今後、労働者人口が減少していくことが分かっている日本では、テクノロジーを活用で生産性を向上させるの解決法は、現時点では残念ながら見当たりません。
チェックイン後のお礼メールや宿泊者台帳の転記作業など、特に、日々のルーティンワークとなっている業務はシステムによって効率化できるポイントです。下記記事ではシステムにより、業務効率化と生産性の向上のポイントがまとまっています。併せてご参考にしてください。
人手不足を解決するオールインワン ホテルシステム

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おわりに
誰もが予期しなかった新型コロナウィルスによる災害を経て、ホテル・民泊の経営はより一層、選択と集中を重視した、経営判断が求められています。従業員たちの未来、企業の将来を作り続ける為にも、実りある投資をご検討ください。
またデジタルツールの利用により接客対応だけでなく、スケジュール管理や台帳管理などのシステムを導入し、業務効率を向上も期待できます。
また、スマートフォンの普及により、デジタル機器へ抵抗がない人も増えてきています。そんな今だからこそ、思い切ってホテルのスマート化に取り組んでみてはいいのではないでしょうか。
