
本記事はセルフチェックインシステムなどのIoT機器を活用したスマートホテルの運営事例やメリットを、全国3,500施設以上のホテル・旅館様へ、宿泊管理システム(PMS)や自動チェックイン機などの提供を通じて得た現場の知見と、最新の業界トレンドを基に、宿泊施設の経営に役立つ実践的な情報を解説します。
日本でも増えてきているスマートホテル
AIスピーカーやAI搭載の冷蔵庫や掃除機などの登場により、すでにIoTは一般家庭においても身近な存在となっています。
例えば、HISが運営する「変なホテル」は、人間ではなくAIを搭載したロボットが接客することで話題になりました。また、大手ホテルチェーンの「アパホテル」は、スマートフォンのアプリでチェックインが完了する「アパアプリ」を開発しています。アパアプリは200万ダウンロードを達成しており、多くのユーザーから支持されています。
このように、日本国内においてもホテルをスマート化する「スマートホテル」は増え続けているのです。
では、実際にスマートホテル化で成功しているホテルをいくつか紹介します。
目次
【事例】マリオットホテル
マリオットは2015年、「ウェスティン」「シェラトン」で有名な「スターウッドホテル&リゾートワールドワイド」を買収しました。これにより業界一位を勝ち取り、世界最大のホテルグループとなりました。
最近では中国大手「アリババグループ」の旅行会社部門「飛豚旅行」と共同でスマートホテル事業に着手。世界最大のホテルグループで、5つ星ホテルも多数あるマリオットホテルが、スマートホテル事業に注力しているのです。
また、マリオットのスマートホテル化で話題になったのが、顔認証でチェックインするシステムです。宿泊客はスマートフォンの専用アプリでホテルに用意されたQRコードをスキャンします。これにより、システムが予約照合しチェックイン手続きが完了するという仕組みです。顔認証で宿泊客を識別することにより、人員を配置することもなく、手続きの簡略化にも成功しています。
また、客室内においては、照明の操作やエアコンの調整、カーテンの操作までできるAIスピーカーを設置。さらに、ルームサービスやアメニティの交換といった要望にまでAIスピーカーが対応しています。
スマートホテル化することにより、ホテルだけではなく宿泊客の利便性にも大きく貢献しているのです。
(出典:『“非接触”はホテル業界でも… マリオットがコロナ禍で試験導入する、宿泊手続きや売店の非接触サービス』)
【事例】変なホテル

変なホテルは、長崎県佐世保市のハウステンボスに1号店がオープンし、その斬新なシステムにより一躍話題になりました。
生産性向上を目的に、AIを搭載したロボットが人間に代わってチェックインやポーター(荷物運び)をします。
その斬新なシステムは、「世界初のロボットホテル」としてギネス世界記録に認定。変なホテルは、日本における「スマートホテル」のパイオニア的存在といえるでしょう。
また、今では主流となった顔認証のシステムや、タブレットを使った客室内の一括操作などにも対応し、スタッフの仕事をベッドメイクなどの一部に絞ったことで、人件費の大幅な削減につなげています。
変なホテルはこれまでの「ホテルでは人間がおもてなしをする」という常識を一変させました。この変なホテルの登場がきっかけで、「スマートホテル」という言葉を耳にしたという人も多いでしょう。
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スマートホテルのイメージの変化
インバウンド旅行客増加の影響で、ゲストがホテルに求めることも大きく変化しました。
円安などの影響により世界各国から旅行客が訪れ、コミュニケーションに必要な言語は多岐に渡ります。
近年のスマートフォンの著しい技術の進化も重なり、スマートホテルの導入により拍車をかけています。
一方で、人によるおもてなしを無くすことで、顧客満足度の低下を危惧する方もいるかと思います。
しかし、今立ち止まって考えていただきたいのが、その「おもてなし」は本当にゲストが求めているのでしょうか。
ホテルによって、客層や宿泊の目的も異なりますので一概には言えませんが、お客様の目線に立って、お客様が求めているものを提供するのが、本来のおもてなしだと思われます。
実際に帝国ホテルエンタープライズ大脇善夫社長はインタビューで下記のように述べています。
ホテルマンとして、最もショックを受けたのが、新型コロナの感染予防を徹底しようとすると、人によるサービスを全否定しなければならなかったことだ。人による心のこもったおもてなしは帝国ホテルの伝統であり、それを否定されると、これからどう差別化していけばいいのか、全社員が悩んだ。結論としては、お客様の安全・安心を最優先に、今できることをしっかりやっていくことしかない、ということだった。
「帝国ホテルの本店は効率化以外にも重要な部分があるので簡単には変えられないが、運営を受託しているホテルやレストランに関しては、ビジネスユースが多く、チェックインやチェックアウトの無人化を進めていく。スマートフォンが発達し、客室内の電話を使う人も減っており、チェックアウトの手続きが必要なくなっている。公共交通の自動販売機や自動改札機が普及したように、ホテルの自動化も、コロナ禍をきっかけに進んでいくだろう。レストランを含め、QRコード決済などのキャッシュレス決済も進む」
公共財団法人 日本生産性本部
人による対面接客の価値が相対的に下がっている今、IoTを活用したホテルのスマート化はどんどん進んでいくでしょう。
ホテルのスマート化によるメリット
人件費の削減
既存のホテルを「スマートホテル化」することで、人件費の削減に繋がります。
例えばピークタイムに3人体制だったフロントを、チェックインシステムと1人のスタッフに置き換えられれば、2名分の人件費を削減できたことになります。
AI搭載のロボットやIoTを活用したシステムを導入し、ベッドメイクなどの人でしかできない業務にのみ人員を配置。ホテル運営に必要な人員を最小限に絞れるため、人件費を大幅に削減できます。
また、宿泊業界は慢性的な人員不足とも言われています。特に地方の旅館では求人をかけても人があつまらないという声も上がっています。
フロント業務のスマート化、人員不足の解消にも期待できるでしょう。
顧客満足度の向上
IoTを活用したスマートホテルのチェックインシステムは、すでにユーザーから高評価を得ています。
ゴールデンウィークなどの繁忙期であれば、チェックインの手続きに行列ができることも珍しくありません。
従来のようにフロントに行って、紙に記入して、、、という作業はお客さんにとって苦痛でしかありません。
一度並ばずにチェックインすることを体験すると、従前のようにチェックインの行列に並ぶことがわずらわしく感じるでしょう。
ホテル向けおすすめIoT機器
HOTEL SMART(ホテルスマート)

ホテルスマートは、エイジィ株式会社が運営するホテルチェックインシステムです。
HOTEL SMART(ホテルスマート)にはチェックイン当日はQRコードをかざすだけでチェックインができる「モバイルチェックイン」を搭載されています。
宿泊台帳も事前に宿泊者に送付したマイページから取得できます。スマートロック、キーボックス、カードキーと連携することで、チェックインからキーの受け渡しまで、非対面で完了します。
無人運営時の本人確認も現地設置のタブレットから行え、日本全国の条例に対応した形になっています。チェックイン用のマイページから部屋のアップグレード、朝食やアメニティなどの追加、オプションツアーの追加販売にも対応。非対面チェックインに加えて、売上のアップまで狙えるシステムとなっています。
RemoteLOCK(リモートロック)

RemoteLOCK(リモートロック)は、株式会社構造計画研究所が運営するホテル向けスマートロックサービスです。
客室のドアロック向けのスマートロックシステムや、エントランス向けのアクセスコントロールシステムなどがあり、ホテルフロントの省人、無人、非対面運営を実現しています。
HOTEL SMART(ホテルスマート)などのホテルシステムとも連動しており、チェックイン対応や鍵の受け渡しの無人対応が可能です。
リモートロックは、最大1000名分の宿泊者の鍵をクラウド上で一括管理します。入室するための暗証番号の発行・変更なども、パソコンとスマホで手軽に操作できます。宿泊予約ごとに暗証番号は自動更新されていくため、一度チェックイン・アウトしたゲストが同じ番号で入室してしまう事態を避けられます。
